「新聞の一面に『生前退位』という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした」
皇后陛下は10月20日、82歳になられた。
宮内記者会の質問「この1年を振り返って感じられたことをお聞かせください」に答える文書の形で、皇后陛下がお気持ちを語られた。(「皇后陛下お誕生日に際し」http://www.kunaicho.go.jp/page/kaiken/show/3)
熊本地震、阿蘇噴火、珍しく東北・北海道を襲った台風などの自然災害、今年1月に天皇陛下と訪問されたフィリピン、リオ・オリンピックとリオ・パラリンピック、日本研究者の発見になる新元素ニホニウム、大隈良典博士のノーベル賞受賞等に加え、続く視覚障害者の線路転落事故にも「最近心にかかること」として言及された。
終盤、皇后陛下は「天皇陛下のお気持ちの表明」について述べられた。
「8月に陛下の御放送があり,現在のお気持ちのにじむ内容のお話が伝えられました。私は以前より,皇室の重大な決断が行われる場合,これに関わられるのは皇位の継承に連なる方々であり,その配偶者や親族であってはならないとの思いをずっと持ち続けておりましたので,皇太子や秋篠宮ともよく御相談の上でなされたこの度の陛下の御表明も,謹んでこれを承りました。ただ,新聞の一面に「生前退位」という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした。それまで私は,歴史の書物の中でもこうした表現に接したことが一度もなかったので,一瞬驚きと共に痛みを覚えたのかもしれません。私の感じ過ぎであったかもしれません。」
「皇室の重大な決断が行われる場合,これに関わられるのは皇位の継承に連なる方々」
天皇陛下も、即位20年の会見で「将来の皇室の在り方については皇太子とそれを支える秋篠宮の考えが尊重されることが重要」とおっしゃっている。皇后陛下はこれを敷衍して「(皇后陛下御自身を含め、皇位継承に連なる方々の)配偶者や親族であってはならない」とはっきりと述べられた。皇位継承に全く関係のない国会・政府はもとより、素人からなる「有識者会議」なるものに至っては何をかいわんやであろう。
明治維新後に、近代立憲国家としての日本を欧米列強に示すため、大日本帝国憲法とともに制定された『皇室典範』とは、長い伝統に基づく皇室の在り方を記した天皇家の「家憲」であり、大日本帝国憲法と同等のものであった。
大日本帝国憲法第74条第1項には「皇室典範の改正は帝国議会の議を経るを要せず」とあり、議会はその改正に関与できなかった。
そもそも、憲法・典範の改正の発議権は、天皇お独りに属する大権である。
皇室の伝統に精通しない者、皇統断絶を企むGHQ『憲法・典範』を絶対とする、連合国の下僕と成り下がった者達が「皇室の在り方を考える」と言っているのをきくと、背筋が寒くなってくるのである。
そして、7月13日のNHKのスクープの後、新聞の一面に極太文字で書かれた「生前退位」の文字。この語が与えた衝撃を、皇后陛下は「大きなもの」とおっしゃった。
御所にて行われる「天皇陛下の有識者会議」ともいえる「宮内庁参与会議」。その2010年7月22日の会合において、天皇陛下が仰ったのは、「私は譲位すべきだと思っている」であった。皇后陛下もずっとご一緒に、陛下の「譲位」のご意向をどう表明するか、どう実現するかについて、6年間も話し合ってこられたのだ。
「それまで私は,歴史の書物の中でもこうした表現に接したことが一度もなかった…」と皇后陛下も仰っている通り、7月13日にNHKが最初に発し、翌日の新聞各紙が一面に太文字で書き、数人の識者から疑問視する声が上がった後も殆どのマスコミが使い続けている「生前退位」とは、国民の誰もが聞いたことのない言葉であった。
皇后陛下は、以前、「象徴天皇」という言葉に関しても、「不思議な言葉…」と微妙な違和感を表現されたことがある。
天皇陛下は、そのお立場の故に、公の場で不平不満を仰るようなことは絶対にない。
1975年、今上陛下が皇太子時代に妃殿下と訪問された沖縄で、左翼過激派に火炎瓶を投げつけられた時にも、眉ひとつ動かされなかったという。幸い皇太子殿下に御怪我は無かったが、妃殿下は警察官に庇われて地面に倒れ、打撲傷を負われた。(ひめゆりの塔事件)「帝王たるもの常に泰然自若、それに比べてやはり庶民出の妃殿下は一瞬避けた…」といって宮中でいじめられたというような、まことしやかな噂もあったくらいである。
このたびも、「新聞の一面に『生前退位』という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした」と、天皇陛下のお心を気遣われながらも、「それまで私は、歴史の書物の中でもこうした表現に接したことが一度もなかったので、一瞬驚きと共に痛みを覚えたのかもしれません。私の感じ過ぎであったかもしれません」と、一歩引いた表現に留めておられる。
が、皇后陛下は「痛みを覚えた」と仰っている。少し考えれば明らかなように、「生前」とは「死ぬ前」のことであり、「死」を直接に連想させる言葉である。さらに、「生前__」と言う熟語は「生前贈与」のように、多くの場合「そう遠くない将来に死が訪れるであろう人」の行動について使われるのであるから、もっと酷い。そして、「退位」には必ずしもポジティブな意味合いがない。それを天皇陛下ご自身のお言葉である「譲位」とすり替えることまでしてNHKが使い、日本中のマスコミ、知識人達が、あろうことか「保守」と呼ばれる者達までが、連日連呼している。これはどう見ても天皇陛下への「お葬式いじめ」だ。
日本報道検証機構は、皇后さまの談話を受け、受け止めや「生前退位」という表現が適切だったかどうかについて、NHKをはじめ主要新聞各社に質問した。NHK広報部からは「国会の答弁等でも『生前退位』『退位』という言葉が使われており、視聴者に意味が伝わりやすいよう、この表現を使っています。ニュースの文脈に応じて、『譲位』という言葉も含め、適宜使い分けています」との回答があった。今後も使い続ける方針かどうかも質問したが、明言しなかった。
(「『生前退位』は『歴史の書物にない表現』 皇后さま、違和感表明 NHKの反応は…」日本報道検証機構 弁護士 楊井人文 Yahoo! News http://bylines.news.yahoo.co.jp/yanaihitofumi/20161022-00063507/)
小野寺まさる氏の10月20日のTwitterによると、どこかの新聞が「おことわり」としてこの「生前退位」という語について弁解しているようだ。しかし、弁解にも何もなっていないどころか、全く意味不明である。「存命中に位を譲ることは明治以降の歴史で例がないことから、意味を分かりやすくするために使っています」?いや、「存命中に位を譲ることは明治以降の歴史で例がない」からといって「譲位」の意味が分からなくなっているということは全くないし、そもそも、意味を分かりやすくするためになら「死」を連想させる不吉な言葉を、天皇という日本の最高権威・「万民の父母」に対して使ってよいと考えるその感性がおかしいだろう。
「言霊のさきわう国」日本では、人々は不吉な言葉はなるべく使わない。まして、目上の人に使うなどもってのほかだ。日本人はこういう感性を無くしかけているのか、それとも日本の伝統に暗い外国人の仕業か?
小野寺氏のツイートが言うように、「生前退位」という不敬語の「出典」は、1984年の社民党と公明党の一議員による国会議論であった。このマスコミ・知識人の「生前退位」連呼は、社民党・公明党とこれらの党が代表する人物、或いは外国を、天皇よりも高い権威とみなす者達の差し金であるに違いない。
いづれにせよ、NHKら「『生前退位』いじめ」に加担していたマスコミは、皇后陛下の全く正当なご指摘を受け、右往左往している。日本経済新聞などは、泡を食ったあまり皇后陛下の仰ったことを完全に捻じ曲げ、見出しだけ読む人を騙そうとしている。
〈皇后さま、82歳に 生前退位 反響に「衝撃」〉
〈天皇陛下の生前退位の意向に対する社会の反響の大きさに「衝撃は大きなものでした」とつづり、「驚きと共に痛みを覚えた」と振り返られた。〉(日本経済新聞2016年10月20日)
皇后陛下が「陛下の生前退位に対する社会の反響に『大きな衝撃』」を受けられた?そうではない、皇后陛下が衝撃を受けられたのは「生前退位」という言葉の不敬に対してだ。「衝撃を受けた」という文章のすぐ後に「歴史の書物の中にもこんな表現見たことがなかった」と続くのだから、どこをどう読んでもこれは「生前退位」という語について仰ったのだとしか見えない。そして、それは只の衝撃ではなかった。「痛み」であったのだ。「私の感じ過ぎであったのかもしれません」とは、先に言ったことが良くないことであるがために、「そんなはずはない。思い過ごしかもしれない」と、いじめに加担した者達への非難の度合いを和らげてくださっているのだ。そもそも社会の反響というなら、90%の国民が天皇陛下の譲位のご意向を支持し、速やかに実現するように心から祈っているのだ。「痛み」であるはずがない。
現に本文の方は、「陛下の意向が初めて報道された直後の心境としては」を「衝撃は大きなものでした」の直前に置いている。「報道の直後」では「社会の反響」などあまりわからない。そして、「理由として、生前退位という表現に『接したことが一度もなかった』ために、『一瞬驚きと共に痛みを覚えたのかもしれません。私の考え過ぎであったかもしれません』と吐露された」となっている。「吐露する」とは、隠していたことを打ち明けることなのだから、やはり皇后陛下の仰っているのは「『生前退位』という言葉に傷つきました。天皇陛下が黙っておられるので黙っていましたが、この機会に打ち明けます」ということではないのか?
極めつけに、この記事の最後には「生前退位に関して皇后さまが『痛み』という表現を使われたことについて」、宮内庁関係者の推量を挙げている。
「生前という言葉の裏側にあるものを連想されたのではないか」
今それが分かるのなら、NHKの最初の報道の時に分かったであろう。だが、宮内庁は何の抗議もしなかった。政府も黙っていた。マスコミは調子に乗っていまだに連呼している。
安倍首相におねがいします。
今すぐ、天皇陛下を愚弄する「生前退位」という不敬な言葉の使用をやめさせてください。
天皇陛下のお気持ちを、皇后陛下のように「謹んで承る」気持ちがあるなら、日本国民の「天皇陛下のご意向を実現して欲しい」という願いを叶える気持ちがあるなら、天皇陛下が既に通り過ぎられた事項、天皇陛下にしかお判りにならない事項を議論している有識者会議は中止し、皇室問題は天皇陛下に全てお任せください。
天皇陛下のご意向を実現するのに、『日本国憲法』とGHQ『皇室典範』が障害になっていることを直視し、『日本国憲法』とGHQ『皇室典範』は、そもそも傲慢・無知な連合国が皇統断絶を企図して制定させた偽典憲であることを思い出し、これらの無効確認、大日本帝国憲法と明治の皇室典範の現存確認を天皇陛下に宣言して頂くよう、ご奏上ください。
もうすぐ『日本国憲法』施行70周年の記念日がやってきます。
この屈辱の日を祝うという欺瞞から、天皇陛下と日本国民を解き放ってください。
(関連稿『「生前退位」という言葉の連呼は、天皇陛下に対する「お葬式いじめ」ではないのか?』)
BBの覚醒というBlogがあります。お読みくださるとありがたいです。最初は、コレハナンダと思われるかもしれません。(私もびっくりした経験あり)
ですが、皇室の真実に気がつくと思います。
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